蟻という生き物
会話といっても、人間のように声を発声するわけではありませんが、コミュニケーションの方法は多種多様でとても驚きます。
アリを長年観察していても、一体何のための行動なのかわからないこともまだまだありますが、よく見る基本的なコミュニケーションを紹介したいと思います。
会話とは違うかもしれませんが、仲間と餌を分け合うというアリの利他的行動の一つです。
餌集め係りの働きアリは、自ら危険を冒して巣の外へ餌を集めに行き、巣の中でお腹をすかせている仲間や幼虫たちに餌を運んでくるのです。
多くのアリは、胃袋のほかにそ嚢(そのう)という袋を持っていて、ここへ貯めた餌を吐き戻す事ができます。
また良く見ると、餌をもらっているのがどちらのアリなのか分かります。
上のクロトゲアリの2匹の場合は、左のアリが吐き戻しています。
下のムネアカオオアリの2匹の場合は、右のお腹の大きなアリが吐き戻しをしています。
良く見ると、お腹が空いてるアリの、必死さが伝わってくると思います。
このとき、餌をもらうアリは、触覚と前足で相手の頭をバシバシ叩いて、餌が欲しい事を強調します。
このとき叩く回数や激しさは、お腹がすいているほど多くなるようです。
前足と触覚で、相手の頭を叩いてエサの吐き戻しを要求しています。
左の個体は口を大きく開けて、そ嚢に貯めたエサを吐き戻して分け与えます。
■仲間を新居へ運ぶ
これは、引越しを行う時や、迷子になって巣に帰れなくなってしまった仲間を巣へ連れて行くときなどに見られる行動です。
引越しの場合は、現在の巣よりも良い環境の新居を見つけたアリが、巣に帰り仲間に知らせます。
この時、帰り道には仲間が分かりやすいように、道しるべフェロモンを地面につけます。
すると、銜えられたアリは、体を丸めて足をたたみ持ち運びやすい体形になります。
これで新居まで連れて行ってもらうのです。
コミュニケーション方法の発達した、社会生活をする生き物だからこそできる行動です。
ここまでくると、虫とは思えないですね。
写真:イカリゲシワアリ
トゲオオハリアリは、これらのアリとは少し違った方法で新居の場所を教えます。
新居を見つけたアリは、巣に帰り仲間にその事を知らせます。
すると、それに気がついた仲間は、触覚で相手の腹部を触りながら、つながって新居まで案内してもらうのです。
もしこの時、触覚が離れてしまうと、相手の位置が分からなくなってしまうようです。
これは、トゲオオハリアリが他のアリのように道しるべフェロモンを使っていないためだと思われます。
新居へ連れてこられたアリは、再びもとの巣に戻り、同じように他の仲間を連れてきます。この行動が繰り返されると、あっという間にコロニー全体の引越しができてしまうのです。幼虫や卵も、忘れずに新居へと運ばれます。
働きアリよりもはるかに大きい女王を連れてくるときは、このように持ち上げる事ができないため、アゴを銜えて引きずるか、または女王が働きアリの後について新居まで歩いていきます。
女王と働きアリの体格差があまりないようなアリは、働きアリを運ぶ時と同じように、銜えて新居へ運びます。
この場合迷子になったアリはその場にとどまり、近くを仲間が通るのを待ちます。
そして仲間に出会うと、迷子になった事を知らせます。
この時どのような合図で、知らせているのかは分かりませんが、それに気がついた仲間は、引越しの時と同じように、アゴを銜えて巣に連れ帰るのです。
トゲアリの働きアリは、危険が迫ると硬い腹部を地面に叩きつけて、その振動で仲間に危険を知らせます。
このときの音は人間にも聞こえるほどの大きさで、コツコツと聞こえます。
アリはとてもきれい好きで、頻繁に自分の体や、仲間の体を舐めてきれいにします。
特に食事が終わった後などには丹念に体を掃除するところを観察する事ができます。
この時舐められているアリは、とても気持ちよさそうに、仰向けになってしまうものまでいます。
■アリは力持ち
昆虫で力のある虫といえばカブトムシとアリですね。
アリは自分の体重よりもはるかに重たいものを運ぶ事ができます。
地中にトンネルを掘る時も、大きな石や、土を運び出すことができるのです。
また、働きアリがエサを巣へ運ぶ時も、驚くほど大きなエサを運んでいる姿を見ることがあります。
一匹で運ぶ事のできない大きなものは、仲間と協力して運ぶ姿も、社会生活をするアリならではの行動です。
この働きアリは、何度も滑り落ちそうになりながらも、巣の中にあった大きな岩を運び出す事に成功しました。
こんなに大きな翅を運べるなんて凄いと思いますが、翅を巣へ運んでも食べるとこなんてないと思うのですが・・・