蟻という生き物

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◆分類 ◆分布 ◆コロニー(家族) ◆仲間同士の会話  ◆世界の蟻

蟻の一生
◆結婚飛行 ◆巣作り ◆産卵 ◆子育て ◆エサ集め

蟻と関係を持つ生き物たち
◆好蟻性生物について
◆昆虫
甲虫目 チョウ目 バッタ目 アブラムシ・カメムシ目 ハチ目 ハエ目            トビムシ目 ゴキブリ目 シミ目
◆クモやその他の生き物
ヤスデ目 クモ目 ダニ目 ワラジムシ目 その他(カタツムリや寄生虫)

■アリと関係を持つ生き物たち -昆虫 チョウ目-
写真:クロオオアリから口移しでエサをもらうクロシジミ
シジミチョウの仲間には、アリと関係を持つ種類が多くあります。
アリと関係を持つのは、主に幼虫の時期で、おしりからアリが好む蜜を出してアリを惹き付けます。
ムラサキシジミ、イワカワシジミ、ヤマトシジミなどの幼虫は、植物を食べて生活をしていて、蜜でアリを呼ぶ事で他の外敵から身を守ってもらう程度で、それほどアリとの関係は深くはなく、集まってくるアリの種類も様々です。
しかし中にはクロシジミ、キマダラルリツバメ、ゴマシジミのように特定のアリの巣で生活をして、アリがいないと生きて行けないような種類もいます。
クロシジミはクロオオアリの巣の中で、アリから口移しによってエサをもらって暮らします。
キマダラルリツバメの幼虫は、ハリブトシリアゲアリの巣の中で、アリからの口移しや、アリが集めたエサを食べて暮らしています。

ゴマシジミはシワクシケアリの巣の中で、アリの幼虫を食べて暮らしています。

■ムラサキシジミ
植物を食べて生活をしていますが、おしりにある蜜腺から、甘い甘露を出してアリを惹きつけます。
常にアリがいるおかげで、他の外敵から身を守ることができるのです。
■ヤマトシジミ
普通種であるヤマトシジミの幼虫は、アリの巣には入りませんが、甘露を出してアリを惹きつけます。
ヤマトシジミのサナギに群がるトビイロシワアリ。
アリは、なぜか甘露を出さなくなったサナギになっても、集まることがあります。
ヤマトシジミの観察場所で、土が盛り上がっている場所を見つけました。
その土山を崩してみると、中からヤマトシジミのサナギが出てきたのです。
すると、近くにいたトビイロシワアリがやってきて、剥き出しになったサナギに土を被せ始めたのです!!
まるでトビイロシワアリが、ヤマトシジミのサナギを隠して守っているように見えます。
アリは大きなエサを見つけると、土で隠す習性がありますが、サナギのことはエサだとは思っていないようなので、何のために隠したのかは不明です。

イワカワシジミ
クチナシの実の中で暮らしていて、中にはアシジロヒラフシアリやシリアゲアリなどの小型なアリが一緒に暮らしています。
クチナシの実を食べたイワカワシジミの幼虫は、丸々と太っています。
外から見ると、こんな感じで穴があいていて、ものすごい量の糞が出てきます。
イワカワシジミも、サナギになっていてもアリたちが集まっています。
シリアゲアリがサナギのまわりに群れていました。
■キマダラルリツバメ
ハリブトシリアゲアリの巣の中で暮らすキマダラルリツバメの幼虫は、アリから口移しによってエサをもらいますが、自らアリが集めたエサに齧りつくこともあります。
キマダラルリツバメのサナギです。
羽化が近いので、美しい翅の色が透けています。
ハリブトシリアゲアリの巣で暮らすキマダラルリツバメの成虫。
チョウは羽化するとアリから攻撃されるため大急ぎで巣から脱出しなければいけません。
そのとき、アリの注意を逸らすために羽の後ろには長い毛のようなものが生えています。
また、万が一体に攻撃されてもダメージを最小限に抑えるため、体にはたくさんの毛が生えているのです。

■クロシジミ

クロシジミは、幼虫の時期にクロオオアリの巣の中で、アリから口移しでエサをもらって成長して、代わりにアリたちに蜜を与えるという、アリに害のない(利益はチョウの方が大きいですが)共生関係を持つ珍しいチョウです。
分布は本州・四国・九州と広いのですが、実際に生息している場所は驚くほど限られていて局所的です。
生息環境としては、宿主となるクロオオアリがいる森沿いの開けた場所です。
これだけ聞くと、こんな場所はいくらでもありそうですが、クロシジミはとても少ないのです。
実際すでに絶滅してしまった場所も多いようで、以前は東京都にもいたようですが、比較的最近に絶滅したそうです…
7月頃に成虫になったクロシジミは、クロオオアリが多く集まる草に産卵します。
クロオオアリが集まっているということは、そこにはアブラムシがたくさんいます。
このような場所に産卵するのです。
そして孵化した1令幼虫は、なんと!アブラムシの甘露を舐めます。
しばらくアブラムシの甘露で成長するのです。
その後、3令幼虫にまで成長した幼虫は、クロオアリの巣に入るのですが、自分で歩いて行くのではなく、クロオオアリによって巣に運ばれるのです。
クロオオアリたちは、まるで自分たちの幼虫を扱うように、大切にくわえて巣へ運びます。
巣の中に入った後は、餌のすべてをクロオオアリから口移しによって与えられます。
京都大学の北條さんによると、クロシジミはアリの幼虫ではなく、オスの成虫に似た匂いを出して、アリたちから世話をされるとの研究結果が出たそうです。
オスの成虫に擬態しているとは驚きです!
そのまま翌年までアリの巣で暮らし、6月頃にサナギになります。
クロシジミはクロオオアリがいないと、生きていくことができないのです。

産卵場には、かならずアブラムシとクロオアリがいます。
クロシジミは、クロオオアリとアブラムシを確認してから産卵しているのでしょう。
卵から孵化したクロシジミは、アブラムシの周りに集まります。
1~2令幼虫の間に食べるエサは、アブラムシの甘露です。
お腹がすくとアブラムシの腹部を頭で叩いて甘露を要求します。
この姿は、まるでアリたちが触覚でアブラムシの腹部を叩く行動にとてもよく似ています。
クロシジミは、どうしたらアブラムシが甘露を出すのか知っているのです!

2令幼虫になったクロシジミには、ある変化が起きます。
それは、アリが近くに来ると、おしりから甘露を出すのです。
クロオオアリはこの甘露が大好物で、触覚で叩きながら甘露を集めています。
孵化してから1週間ほどで、クロオオアリがクロシジミを巣に運び始めました。
クロシジミを見つけたクロオオアリは、優しくアゴでくわえて、そのまま巣の中へと運んでいきます。
アリの巣の中では、クロシジミたちは群れていることが多いようです。
クロオオアリから口移しでエサをもらうときは、体を左右にユラユラと揺さぶります。
クロオオアリの巣に入って、わずか1週間後の姿です。
アリからエサをたっぷりともらい、短期間でとても大きく成長します。
クロシジミはアリからの口移し以外に、巣に運ばれた虫を直接食べたのです。
美味しそうに虫に齧りついています。
クロオオアリに甘露を与えるクロシジミ。
クロオオアリからたくさんのエサをもらい成長したクロシジミは、翌年の初夏にサナギになります。
飼育下では成長が早く、年内にチョウになるようです。

100%共生という生活に頼っているクロシジミは、アブラムシやクロオオアリの助けがないと生きていくことができません。
アブラムシやクロオオアリに問題があれば、クロシジミは生きていけないと言うことです。たとえば生息地で、大規模な草刈りなどが行われれば、アブラムシがいなくなります。アブラムシがいなくても、雑食性のクロオオアリには影響はありませんが、クロシジミは生きていくことができません。さらに、クロシジミ専門に寄生するハチがいるのですが、クロシジミが減れば、当然寄生バチも生きていけません。
クロシジミが減っている現在は、この寄生バチが先に絶滅するのかもしれません。このような特殊な生き物たちは、環境の変化に敏感で、絶滅しやすいのです。一見、楽に見える寄生や共生という生活も、実際は危険な綱渡りのような生き方なのです。



■ゴマシジミ

夏にゴマシジミの成虫は、ワレモコウの花に産卵します。
孵化した幼虫は、花の中に潜り込んで花を食べて成長し、その後花から降りてアリに出会うそうです。
生息地にはシワクシケアリ以外にも、トビイロケアリ、エゾアカヤマアリなどのアリも多くいるため、ほとんどのゴマシジミは、シワクシケアリに出会う前に他のアリに食べられてしまうそうです。
しかも、運よくシワクシケアリに出会えても、無事に受け入れられる個体はわずかなようです。
チョウの研究をしている工藤さんにお聞きしたところ、産卵場所もワレモコウさえあればどこでもよいらしく、下が沼地になっているような場所でも産卵するようです。
このような場所に産卵しても、当然孵化した幼虫は水に落ちて死んでしまいます。
クロシジミや、キマダラルリツバメは、アリの存在を確認してから産卵するのに対して、ゴマシジミは産卵場所さえ運まかせなようです。
なんと厳しい生活なのでしょうか!
アリの巣の中で、アリに守られながら、アリの幼虫を食べるなんて楽な生活だ、なんて思ったら大間違いだったようです。
多くの試練を乗り越えた、幸運な幼虫だけが成虫になることができるのです。
考えてみれば、簡単に受け入れられていては、シワクシケアリの幼虫が食べつくされてしまい、シワクシケアリのコロニーが壊滅してしまいます。
クロシジミは、アリからエサをもらうだけなので、アリにとって労働力以外の大きな害はない共生関係ですが、直接幼虫を食べてしまうゴマシジミは、アリにとっては共生ではなく寄生になります。
お互いが滅びないように生き延びるのには、共生であるクロシジミとクロオオアリは『アリ=シジミ』でよいのに対して、寄生であるゴマシジミとシワクシケアリは『アリ>シジミ』でないといけないので、厳しい生き残り生活は当然なのかもしれません。
他の多くの寄生生物たちも、厳しい生き残り生活をしていて、その分産卵数を増やすなどで生き延びてきています。
このような話を聞くと、アリの巣で暮らすチョウが減っていくのも分かる気がします。

夏にワレモコウの花に産卵します。
ワレモコウの花を食べて成長するゴマシジミの幼虫。
9月ごろに花から出たゴマシジミは、シワクシケアリに出会えるように、地面に降ります。
運よくシワクシケアリに出会えたゴマシジミは、蜜腺から甘露を出してアリの興味を惹きつけます。
■ゴマシジミが、シワクシケアリに運ばれるための一連の行動
①運よくシワクシケアリに出会えたゴマシジミ
②アリは、シジミを触覚で触れます。
すると、おしりの蜜腺からは、甘露の雫が出てきます。
③甘露を舐めた後は、シジミの頭部周辺の肉が膨らみ、上半身を持ち上げます。
アリは膨らんだあたりを触覚で触れます。
④くわえる場所を決めます。
この行動を何度も観察しましたが、アリがくわえる場所は決まっているようで、毎回同じ場所をくわえました。
もしかすると、この場所からは何かの匂いなどが出ているのかもしれません。
⑤アリはシジミを持ち上げます。
するとシジミは、体を縮めたのです。
これは、運ばれやすいようにするためと、アリのアゴを、肉で挟んで落ちないようにしているのかもしれません。
このまま、アリの巣の中まで運ばれて行きます。

運よくシワクシケアリの巣の中に入り込んだゴマシジミは、その後アリの幼虫を食べて成長します。
アリの幼虫を食べるときは、完全に覆いかぶさって食べるため、上から見ても捕食しているところは見ることができません。
アリも、すぐ隣で幼虫が食べられていても、まったく気が付かないようです。
こんなに恐ろしい寄生生物を、アリが自ら運びこんでしまうとは・・・
シワクシケアリの巣に侵入したゴマシジミは、毎日たくさんの幼虫を食べて、どんどん成長します。
ゴマシジミのサナギと成虫

■ガの幼虫

このミノに入った幼虫は、マダラマルハヒロズコガというガの一種です。
様々なアリの巣や、その周りで暮らしています。
危険が迫るとミノの中に隠れます。


クサアリや、トゲアリなどのアリの巣の入り口付近には、多くのマダラマルハヒロズコガがいます。

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