蟻という生き物
多くの昆虫は生まれてすぐに、一匹で生きていかなければいけませんが、家族で協力して生きていくアリは、女王や働きアリが子育てをします。
アリの子育ては、アリを観察していて、最も感動する場面でもあります。
無力な幼虫を、大切に守り、育てるところは、私たち人間とまったく同じように、子に対する深い愛情を感じられます。
女王アリの産卵数は、年数が経つにつれて多くなります。
ムネアカオオアリの場合、結婚飛行をした1年目は10~20匹前後の働きアリしか育てる事はできませんが、2年目からは100以上もの卵を産卵するのです。
産卵数の増加について、ある実験をしてみました。
結婚飛行を終えたばかりの、1年目の若い女王に、別のコロニーの働きアリを特別な方法で導入させると、1年目とは思えないほどの大量の卵を産む事から、女王は年齢以外に、働きアリの数に合わせて産卵数を増やしているようです。
育てられない量の卵を産んでも、無駄になってしまうためです。
しかし、女王アリは一体どんな方法で働きアリの数を把握しているのでしょうか?
卵から孵化したアリの幼虫は手も足もなく、自分で餌を捕ることが出来ないため、女王や働きアリ達によって育てられます。幼虫の育て方は、働きアリが巣に持ち帰った餌を、幼虫が食べやすいように細かく刻んで口元へ運ぶか、そ嚢に貯めた餌を口移しで吐き戻して与えるものがほとんどですが、一部のアリは、巣へ持ち帰った餌の付近に幼虫を置いて、幼虫は自力で餌を食べるようなアリもいます。大きなコロニーになると、幼虫たちは同じ部屋に数百匹も集められる事がありますが、もしこの時、エサを上手く食べれなかったら、一体どういう方法で、その事をアリに伝えるのでしょうか?
すべての幼虫が無事に育つところを見ていると、何らかの方法で空腹になっている事を働きアリに伝えているはずです。アリは部屋を使い分けますが、幼虫たちは、幼虫部屋で育てられます。
この幼虫部屋は、良く観察すると、さらに細かく部屋分けをされている事がわかります。
何と成長段階ごとに別の場所で育児されているのです!
同じ幼虫であっても、小さな幼虫と、大きな幼虫では置き場所が違うのです。このように大切に育てられた幼虫は、大きくなるとサナギになります。
サナギは、繭を作るものと、繭を作らずにサナギになるアリがいます。
繭を作るタイプのアリは、羽化が近づくと、繭から出てくるのを手伝います。
卵は粘着性があるため、このように運ぶことができます。
自分の兄弟である幼虫を、とても大事に子育てするのです。
良く見ると白身と黄身に分かれています。
幼虫は食べたものによって色が変わっています。
一番大きな幼虫は、新女王になる幼虫です。
働きアリは、常に卵や幼虫たちを舐めてカビなどの雑菌から守ります。
こんなにたくさんの幼虫がいても、働きアリたちは完璧に育て上げてしまうのです。
口移しでエサをもらうだけではなく、近くに置かれたエサを自分で食べる事もできます。
アリは自分で繭を破る事ができないようで、他のアリたちに繭を破ってもらいます。
幼虫はサナギになる前に、口から吐いた糸で、繭を作ります。
端が黒くなっていますが、これはサナギになる前の幼虫の糞です。
繭から出るときは、他の働きアリや女王が繭を破ります。
1匹では繭から出ることができないのです。
ノコギリハリアリは、繭を鋭いアゴで破り、自ら外へ出てきます。
この毛は実はとても大切なもので、体が汚い地面に触れることを防いだり、オナモミのように幼虫同士でくっついて、働きアリがまとめて持ち運びをすることができます。
この写真を見ると、幼虫の体が地面に触れないで宙に浮いた状態であることが分かります。
これは、雑菌などの多い土で、体が汚れないためにするためだと思われます。
ムカデを専門に食べるノコギリハリアリの幼虫です。
ハリアリ類の幼虫は、このような体形の種類が多く、幼虫は自ら、近くに置かれたエサに齧りつきます。
大きな幼虫は餌もたくさん食べるため、働きアリたちはエサ集めが大変です。
手前にある巨大な幼虫は、新女王になる幼虫です。
働きアリは、幼虫のために、巣の外へ餌を探しに行きます。
卵や幼虫は、お互いくっつくため、一匹のアリでたくさん運ぶ事ができます。
ヤマアリ類は布のような丈夫な繭を作りますが、ハリアリ類は、薄くて破けやすい繭を作ります。
アリは卵を触覚で触れて、場所や数を確認します。
手も足もない幼虫がとても上手くエサを食べる姿はとても驚かされます。
手も足もない幼虫ですが、一生懸命首を伸ばしてエサを食べます。
この方法は、ハリアリ類だけではなくそ嚢のあるアリも行います。
大きなエサがとれたときは、幼虫を直接エサの近くへ置きます。