蟻という生き物
■世界の蟻

「アリはどれも同じに見える」と思っている方も多いと思いますが、良く見れば大きさや姿は種類によってまったく違うのです。
■女王のいないアリ

このアリには外見で区別できる女王はいません。
コロニーの中の1匹が、雄と交尾をして産卵します。
羽化したての個体には、翅芽痕という赤く丸いものがあります。
これがあるものが、女王役のメスになります。
トゲオオハリアリはとても気の強いアリです。
かなり大きな獲物でも、1匹で立ち向かっていきます。
そして物凄く大食漢です。
かなり大きな獲物でも、1匹で立ち向かっていきます。
そして物凄く大食漢です。
■女王のいないアミメアリ

しかもオスもいないのです!?
何とこのアリはすべてのアリが産卵する事ができ、しかも交尾をしないで単為生殖によって繁殖します。
そのため、コロニーはとても巨大になり、時に数十万匹にもなることがあります。
写真のように、稀にオスアリが現れることがあります。

このアリには女王がいなくて、すべてのアリが単為生殖によって繁殖します。

一般的にアリは雑食性ですが、このアリはトビムシが主食です。
ウロコアリのアゴの内側には、感覚毛と呼ばれる長い毛がたくさん生えていて、この毛にトビムシが触れたとたんに、猛スピードでアゴを閉じて、まるでトラバサミのように捕らえてしまうのです。

ウロコアリの巣を見つけて観察していると、ヤスデを捕食していました。
幼虫もヤスデに齧りついています。
トビムシは主食ですが、小さい獲物なら捕食するようです。

一見ケアリのような小さなアリですが、実はとても恐ろしいアリなのです。
このアリは本来日本のアリではありませんでしたが、日本に侵入し定着しています。
何が恐ろしいのかと言うと、このアリはとても強く、他のアリを襲いながら分布を広げます。
そのためアルゼンチンアリのいる場所には他のアリがまったくいなくなるという現象が起きます。
現在は駆除方法が考えられています。

なんとアリを専門に襲って食べるアリがいるのです!
このアリは沖縄に生息をするチャイロヒメサスライアリというアリです。
サスライアリと言えば、南米などで有名なグンタイアリです。
日本の種類は3mmほどと小型ですが、大集団で他のアリを襲う姿などはまさにグンタイアリです。
とても珍しいアリなので滅多に姿を見ることはできません。
このアリが狩りをしている最中は、付近のアリたちは大パニックになり、幼虫や繭をくわえて巣から飛び出してきます。
チャイロヒメサスライアリは、アリの巣に侵入して、幼虫やサナギを奪って捕食するのです。
しかも、乱れる事のない行列で、数百から数千もの働きアリが襲ってくるので、襲われたアリたちはどうする事もできません。
このとき、アリのすべての足を切り落とすという、襲うことにに特殊化した狩りの仕方をします。
襲われるアリは、アメイロアリ、ウメマツアリなどの小型なアリが多いようです。
チャイロヒメサスライアリは、アリの巣に侵入して、幼虫やサナギを奪って捕食するのです。
しかも、乱れる事のない行列で、数百から数千もの働きアリが襲ってくるので、襲われたアリたちはどうする事もできません。
このとき、アリのすべての足を切り落とすという、襲うことにに特殊化した狩りの仕方をします。
襲われるアリは、アメイロアリ、ウメマツアリなどの小型なアリが多いようです。

幼虫だけではなく、成虫のアリも襲います。

沖縄に住む、ケブカアメイロアリという大きなアリは夜行性のアリです。
昼間は土の中から出てくる事はなく、日が沈んでから活動を開始するのです。
本州に住む、ミカドオオアリを同じく夜行性のアリです。

オニコツノアリの兵隊アリは、働きアリよりもはるかに大型で、女王よりも大きな頭を持ち見るからに強そうな感じです。
しかし、コツノアリの兵隊アリは、実はとても臆病者で、外敵と戦うのは体の小さな働きアリで、兵隊アリは真っ先に巣の中へ逃げてしまうのです。
では何のために大きな体をしているのかと言うと、主な役割は、働きアリが運んできた大きな餌を解体したり、その大きな腹部を利用して餌を貯蔵したりするのです。
巣の中に長期間貯蔵する事のできない生ものは、このように働きアリの腹部に貯蔵することができるのです。
この貯めた餌は、働きアリや幼虫に吐き戻して分け与える事ができます。
■体毛が長いアリ

全身に長い毛が生えています。

■トビムシを食べるハンミョウアリ
東南アジアに生息する、ハンミョウアリというアリです。
クワガタのようなアゴを持ち、エサとなるトビムシを素早く捕らえます。
目がとても大きく発達していて、素早く逃げるトビムシを追うことができます。
東南アジアに生息する、ハンミョウアリというアリです。
クワガタのようなアゴを持ち、エサとなるトビムシを素早く捕らえます。
目がとても大きく発達していて、素早く逃げるトビムシを追うことができます。


同じようにアゴを開いて狩をするアギトアリは、アゴの内側にある感覚毛に獲物が触れるとアゴを閉じますが、ハンミョウアリは発達した視力を使い獲物を追いかけるのです。

2~3mmの、小さく素早いトビムシをとても上手く捕らえることができます。
視力がとてもよく、一度狙うとトビムシにぴったりと付いて追いかけます。

まるでハサミのように、ジョキジョキしてます。
普通のアリなら、アゴで噛んだエサを普通に食べる事ができますが、アゴがこんなに長いと口まで距離があるためすぐには食べる事ができません。

何とハンミョウアリは手を使って、エサを持つことができるのです!!
長いアゴの先端で噛んだエサを、両手でしっかりと持ち、口へと運ぶのです。
こんなに上手く手を使うアリがいるなんて驚きました。
この行動を繰り返して行い、小さなトビムシを数分間かけて食べ終わりました。

ただし顔に似合わずとても臆病なので、大きな獲物は怖がって襲いません。
この写真のコオロギも、生きていると襲わなかったため、殺してから与えました。
アリはとても凶暴な生き物のように思われていますが、実は結構臆病なのです。

沖縄に生息をする、オキナワアギトアリです。
このアリはアゴを180度に開いて、まるでトラバサミのように使い獲物を捕らえます。
アゴを閉じる力はとても強く、アゴが硬い地面に当たると、反動でアリが後ろへ飛んでいってしまうほどです。
このため、まるでアギトアリがジャンプしているように見えます。


細くて長い毛が4本あります。
この毛に獲物が触れると、瞬時にアゴを閉じで獲物を捕らえるのです。
このとき、毛に獲物が触れてから、その刺激が脳に伝わる神経の速さは、動物の中で最も早いといわれています。

アゴを180度に開くなど、行動はまったく変わりません。
■まるでクワガタ!

その名の通りクワガタのようなアゴを持ち、とても大きな目をしています。
視力がとてもよく、離れた場所の獲物も発見する事ができます。
クワガタアリは狩りの方法も変わっています。
なんとジャンプして獲物を捕らえてしまうのです!
優れた視力で獲物を見つけると、2cmくらいの距離まで近づき、ジャンプして長いアゴで獲物を捕まえるのです。
まるで魚を捕らえる銛のような狩りの方法です。
なんとジャンプして獲物を捕らえてしまうのです!
優れた視力で獲物を見つけると、2cmくらいの距離まで近づき、ジャンプして長いアゴで獲物を捕まえるのです。
まるで魚を捕らえる銛のような狩りの方法です。

親子で色が違うウマアリです。
多くのアリは女王は大型ですが、色は働きアリも同じですが、このウマアリは赤と黒で同じ種類のアリとは思えないくらい差があります。

母親に似たものもいれば、真っ黒いものまでいる変わったアリです。

これは南米に生息するハキリアリです。
ハキリアリは巣の中でキノコ(菌糸)を栽培して、それを幼虫が食べて育ちます。
結婚飛行で巣から飛び立つときは、菌糸を少しだけ口にある袋に入れて飛び立ち、交尾を終えるとその菌糸を栽培してコロニーを創るのです。
菌糸は、切り取った葉を栄養分にして栽培します。

まるでクワガタのようなアゴを持つノコギリハリアリは、ムカデを専門に捕らえるハンターです。
鋭いアゴで噛み付き、毒針で麻痺させて大きなムカデも捕らえてしまいます。

首に噛み付き、毒針で刺しています。
それにしても、どうして毒のあるムカデを専門に狩るようになったのでしょうか?
もっと楽して狩る事のできる昆虫はたくさんいると思うのですが・・・

大きなアゴと、毒針を使って獲物を捕えます。

体長1.5mmほどの小さなアリですが、すごい狩りをするアリなのです。
このアリもムカデを専門に捕食すると言われていますが、生息数がとても少なく、野外での生態は不明でした。
2011年の3月に、運良く狩りの場面を観察することができました。

20匹以上はいそうな子ムカデを、集団で襲いころしてしまいました。
動かなくなったムカデは、数匹の働きアリで運んでいます。

クロナガアリは植物の種子を食べるアリです。
そのため活動時期は、多くの種子が落ちている秋から活発になります。
夏場は巣口を閉じて、秋に巣に蓄えた種子を食べて暮らしています。

巣の入り口を観察していると、次から次へとタネを持ち帰る働きアリを観察する事ができます。
タネが主食のクロナガアリですが、小昆虫の死骸なども食べます。


日本のクロナガアリには兵隊アリは現れませんが、このクロナガアリはコロニーが成長すると、女王よりも大きな頭の兵隊アリが生まれてきます。
兵隊アリは、大きく硬い種子を砕く事ができるのです。

クロナガアリ以外のアリも、タネが好きなアリが多くいます。
これらの多くは、タネではなく、タネに付着しているエライオソームを食べるためです。
エライオソームとはスミレやカタクリなどの種子に付着している脂肪分や、糖分を含むもので、アリの大好物なのです。
タネはこれをアリに与える代わりに遠くまで運んでもらい、分布を広げます。
アリはエライオソームを食べると、種は巣の外へ捨てるので、結果的にタネは分布を広げる事ができるのです。
写真:トビイロシワアリの巣に貯蔵されているタネ


南西諸島に生息をするクロトゲアリは、樹上に幼虫が吐き出す糸を使って巣を作ります。
これは終令幼虫が繭を作るときに吐き出す糸を利用します。
働きアリは、糸が吐き出せるようになった終令幼虫をくわえて、巣に糸をつけ、その糸に枯葉や木屑などを貼り付けて、丈夫で頑丈な巣を作るのです。
このような樹上生活をするアリは、降雨量の多い熱帯に多く生息していて、巣が雨で水没しないように樹上で暮らしているものと思われます。

このアリは、巨大な繭の中で生活をしているのです。
この繭で作られた巣はとても頑丈で、手で破ろうとしてもなかなか破く事ができないほどです。
それにしても幼虫が繭を作るための糸を、巣作りに使うなんてすごい発想ですね。
八重山諸島に生息をするタイワントゲアリも同じように幼虫の糸で巣を作りますが、樹上ではなく地中に巣を作ります。

働きアリは幼虫をくわえて、糸を付けたい場所に幼虫を運びます。
すると幼虫は口から糸を吐き出すのです。
このとき触覚で幼虫の口元を触っているので、糸を吐き出しているのを確かめているのか、吐き出させるための何らかの合図があるのかもしれません。
クロトゲアリは幼虫の時から働き者です。

ミカドオオアリは、土でもなく朽木でもなく、何と竹の中で生活をします!
竹林で、倒れた竹の中に巣を作っています。

一般的なアリは、結婚飛行で交尾すると、一匹で新しい家族を作りますが、トゲアリの女王は、交尾を終えるとクロオオアリの巣に侵入して、女王を殺して巣を乗っ取ってしまうのです。
クロオオアリの女王を殺したトゲアリは、その体液を自分の体へ付けます。
アリは仲間を匂いによって判別しているため、クロオオアリの働きアリたちは、女王の匂いの付いたトゲアリを、自分たちの母親だと思い込み、トゲアリの女王のためにエサ集めや、子育てをするようになるのです。
そして、1年ほどたちクロオオアリが寿命で死ぬころには、すっかりトゲアリのコロニーに入れ替わってしまうのです。
アリは家族の少ない初期が、外敵に襲われることが多く、最も危険な時期なのですが、トゲアリは、乗っ取りという方法で、生き残る確率を高くしているのです。

その後、巣の奥深くへ侵入して、女王を探します。

女王の匂いが付いたトゲアリは、クロオオアリの働きアリたちに疑われることなく、コロニーを乗っ取ってしまいます。

コロニーの匂いが付いたトゲアリに、他の働きアリもまったく気が付きません。

サムライアリはクロヤマアリの巣に侵入して奴隷狩りをする事で有名ですが、女王も結婚飛行を終えると、クロヤマアリの巣に侵入して女王を殺して巣を乗っ取ります。
多くの場合、クロヤマアリの女王の腹部に噛み付き殺します。
女王を殺されると、クロヤマアリのハタラキアリはサムライアリの女王のために働くのです。

クロヤマアリは多くのアリと同じように、結婚飛行を終えると一匹で何も食べずに子育てをするため、栄養を蓄えた大きなお腹をしていますが、サムライアリは巣を乗っ取ったあとは、クロヤマアリたちからエサをたくさんもらえるため、最小限の栄養を蓄えた小さなお腹をしています。
また、敵と戦う事ないクロヤマアリは頭部やアゴが小さくなっていますが、クロヤマアリの女王を殺すサムライアリは大きな頭部に、鎌のように鋭いアゴを持ちます。
両者の共通点と言えば、空を飛ぶために筋肉の発達した厚い胸部を持つことくらいです。

サムライアリは完全に奴隷狩りをして生きていくために進化したアリで、自分たちでは子育てもできないためクロヤマアリの幼虫や繭を盗んで自分たちの幼虫の世話や、餌集めなどをクロヤマアリにやってもらいます。
そのため定期的にクロヤマアリの巣を襲わなければいけないのです。

巣に侵入したサムライアリは、次から次へと繭を盗みだしてきます。
奴隷狩りは、一斉に同じ巣を襲いに行くため、サムライアリの巣から、クロヤマアリの巣にかけて、とても長い行列ができます。

サムライアリに誘拐されてきたクロヤマアリは、違い種類だとも知らずに、サムライアリのために一生懸命働くのです。

アカヤマアリはサムライアリと同じように、クロヤマアリを奴隷狩りしますが、結婚飛行を終えた女王もクロヤマアリの巣を乗っ取ります。
クロヤマアリはアカヤマアリのためにエサを集めたり、子育てなどの仕事をします。
奴隷狩りをするアカヤマアリの巣には、いつもたくさんのクロヤマアリが一緒に暮らしています。
サムライアリは奴隷狩りのとき意外は外へも出ないし、子育てもしませんが、アカヤマアリはエサ探しも子育てもします。
アカヤマアリだけでも生きていく事ができ、野外でもアカヤマアリの巣に、必ずしもクロヤマアリがいるわけではありません。
サムライアリは奴隷狩りのとき意外は外へも出ないし、子育てもしませんが、アカヤマアリはエサ探しも子育てもします。
アカヤマアリだけでも生きていく事ができ、野外でもアカヤマアリの巣に、必ずしもクロヤマアリがいるわけではありません。

エゾアカヤマアリは、松の枯葉などを集めて蟻塚を作ります。
一つのコロニーには、時に数十匹もの女王がいることがあり、コロニーも超巨大になります。

クサアリモドキやクロクサアリなどのクサアリ類も、ケアリやアメイロケアリの巣を乗っ取ることで知られます。
これらのアリは、巣に侵入する前に、地上を歩いている働きアリを殺して、その体液を体に塗り、匂いを付けてから侵入するのです。

巣に侵入して、わずか1ヶ月ほどで数百もの卵を産卵します。

アメイロケアリはクロクサアリの女王に寄生されるアリですが、アメイロケアリの女王もケアリの巣を乗っ取るアリです。
交尾を終えた女王は、ケアリの働きアリを殺して、その匂いを自分に塗り、巣へ侵入します。

このとき、エサはケアリの働きアリから口移しによってもらいます。
まったく種類の違うアリなのに、ケアリはだまされてしまうのです。

何と、ケアリの働きアリたちが、自分の母親である女王を攻撃し始めるのです!
これは、ケアリの働きアリが、アメイロケアリの女王を自分たちの母親だと間違って認識しているためです。
アメイロケアリの女王は、他の巣を乗っ取るアリたちのように攻撃して殺すのではなく、ケアリの働きアリを見方に付け、ケアリに女王を殺させてしまうのです。

そして、ケアリたちが寿命で死ぬころには、すっかりアメイロケアリのコロニーに変わってしまうのです。

女王が単独でコロニーを作るアリに比べて、初めから働きアリがいることで、数倍の速さでコロニーが大きくなりました。
今後、このコロニーがトビイロケアリと関わる事は一切ありません。

トビイロケアリの巣を乗っ取るアメイロケアリですが、アメイロケアリもクロクサアリに巣を乗っ取られます。
野外でこの2種類が一緒に暮らしている場合は、すでにアメイロケアリの女王は死んでしまい、巣の中には乗っ取りに成功したクロクサアリの女王がいます。

別の種類のアリの巣に寄生するアリが、このヤドリウメマツアリと言うアリです。
このアリはウメマツアリの巣で暮らしていて、姿かたちはウメマツアリにとても良く似ています。
しかも、ヤドリウメマツアリは働きアリを一切産まずに、新女王とオスのみをつくるのです。
完全に、寄生するために特殊化してしまっているのです。

大きさが一緒だったら、別種だとは気がつかないほど色や外見が似ています。

沖縄で採集したオオズアリのコロニーで、とても変わった働きアリを見つけました。
何と兵隊アリより大きな個体です。
体は大きくても、体形は働きアリなのです。
しかもこのコロニーからは、同じような巨大働きアリが10匹近くもいたのです。
なぜこのように巨大化したのかは分かりませんが、この個体は線虫メルミスに寄生されていたので、寄生虫が幼虫時期に入り込み、ホルモンのバランスが崩れたりしたのかもしれません。

カギバラハリアリの仲間は、その名の通り腹部の先端がカギ状に湾曲しています。
このアリは、クモや昆虫の卵を専門に食べるのですが、この湾曲した腹部にエサの卵を挟んで巣へ持ち帰るそうです。

これはハサミムシの卵です。
幼虫も卵に齧りついています。

よく見ると、それは卵ではなく孵化したてのクモの子供でした!
このクモ、体が白いので1令幼虫です。
卵以外のエサも食べるようですね。